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ESG国別スナップショット:日本 – ESG対応が進む国

ESG国別スナップショット:日本 – ESG対応が進む国

日本の最新ESGトレンドを分かりやすく解説

日本で責任投資が軌道に乗るまでは若干の時間を要したが、政府や金融監督機関、主な市場参加者からの関心の高まりと共に、各プレイヤーは転換点に向けて歩調を合わせているように見える。
日本は今や 世界最速 で成長している責任投資市場の1つであり、アベノミクス – 安倍晋三首相が主導する日本経済活性化を目的とした経済政策 – と歩調を合わせた年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の取組みを通じて、日本市場におけるスチュワードシップおよびコーポレートガバナンスに関する認知度は高まっており、ESG促進に適した環境を作り出している。

意欲的にESGを追求する巨大年金基金
日本は運用資産1兆5000億ドル以上を有する世界最大の単一年金基金を擁している。2006年に設立されたGPIFは、今後100年間の日本における年金給付の補完を目的としている。日本の労働年齢人口は「人口統計上の時限爆弾」に直面しており、GPIFが自らを「超長期投資家」と明確に位置付けていることは偶然ではない。
GPIFによるESG追求の取り組みは、投資原則を公表し責任投資原則(PRI)に署名した2015年にまで遡る。しかし、取り組みが本格化したのは2017年であった。GPIFは3兆円(267億ドル)をESG指標が高い株式に向けるという大規模な資金シフトを開始し、FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI 日本株女性活躍指数という3つのESG指数に連動した運用に1兆円(88億ドル)を振り分けた。MSCI 日本株女性活躍指数は職場における女性活躍を推奨する企業から構成され、その目的は急速に高齢化する日本の人口への対応を急ぐ政府の動きと関連している。その翌年、GPIFはさらに1兆2000億円(100億ドル)を初となる 低炭素指数 に沿っての運用を開始した。
GPIFはすべての運用受託機関に対してESGを考慮するよう求めており、すべてのアセットにおいてESG統合がみられている。2017年には運用受託機関に関する評価基準が改訂され、スチュワードシップおよびESG関連活動がより重視されることとなった。さらに受託機関の報酬に関する分析も実施されることが明かされている。
GPIFは昨年、世界銀行グループとの協働で、債券運用におけるESGインテグレーションに関する調査研究を実施したが、GPIF広報担当者からRIへの回答によれば、実際のインテグレーションはまだ実施されていないという。「債券から代替資産までの各種資産に、ESGを組み込むための具体的手法に関しては、より詳細な研究が必要であり、現在も取り組みを進めている」。
GPIFのESG追求は、その規模からも、ESG重視の動きが日本およびアジアにより大きく波紋を広げ始めていることを意味している。FTSE Russell/ESGアジア・パシフィックヘッドの岸上有沙氏は、変化を進めるにあたってGPIFが採った方法に注目する。「GPIFは資産の割振りや投資のベースとする指数に関して非常にオープンであり、それらの手法の透明性も確保されていた。それらの要素がムーブメントに寄与したと考察する」。
GPIFが実施した日本の 上場企業 を対象とした調査によれば、中型株以上のほぼすべての企業がGPIFのESG指数を意識し、多くの企業がそれに対応して自社の組織構造を変更したとしている。MSCI ESGリサーチ/エグゼクティブディレクターの鷹羽美奈子氏は、企業サイドのESG格付けに関する理解は今なお初期段階にあるものの、各業界およびセクターを通じて企業のトップマネジメントが関心を寄せていることで、多くの企業がESGに対するアプローチ手法に関してMSCIに助言を求めていると述べている:「企業はどんな格付けを付与されるかを非常に重視している」。
他の市場プレイヤーはGPIFほど大胆な動きを見せてはいないが、サステナビリティ(持続可能性)を考慮する資産は着実に増加している。日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が実施した調査によれば、日本におけるサステナブル投資残高合計は2014年の620万ユーロから2018年には1兆8000億ユーロに増加している。一部のアセットオーナー(企業年金基金、生命保険会社など)は個別のマンデートを有していないものの、ミューチュアルファンドやETFなど各種ESG関連商品を活用している。こうした傾向は顕著ではないものの、今後も継続が予想される。
投資家は統合を手法としてESGにアプローチする傾向にあり、ネガティブ・スクリーニングは最近になってようやく手法として採用されはじめた。大手アセットマネジャーは排除基準を含むマンデートの取り扱いや、少なくともクラスター爆弾製造企業を投資対象から除外をし始めている。また、一部では化石燃料に関する新規投資からの見直しもみられている。


FTSE Russellの岸上氏は、銀行はより一層貸付行為にESG情報を活用していると述べている。注目すべき一例が三井住友銀行で、同行はFTSE RussellのESGデータを活用して企業向けシンジケートローンの組成を行い、そのプロセスを通じてローンに参加する地方銀行はESG導入が可能となっている。「これはいわば地方銀行にとってESGに関する入門レベルの知識を獲得する場であり、ESG知識は投資の枠に収まることなく広まりを見せている」。

ESGへの取組みのバックボーンとしてのスチュワードシップとコーポレートガバナンス
2014年、日本はアジア市場で初めてチュワードシップ・コードを導入した国の1つとなった。これは、成長促進における投資家 – 企業の対話の重要性が明記された伊藤レポートを受けてのことである。この7つの原則からなるコードは、長らく受動的とみられてきた投資家に、株主議決権行使およびエンゲージメントを通じた持続可能なリターンと成長の促進を奨励する。
その直後にコーポレートガバナンス・コードが策定され、どちらのコードにもESGに関する具体的言及はなかったものの、FTSE Russellの岸上氏は、両コードは慣行を定着させる下地作りの役割を果たしたと述べている。「長期的なスチュワードシップ責任について考えることは、環境および社会的ファクターを無視できないことを意味する」と同氏は述べている。「そのため、ESG統合への道程はまさにここから始まったと言える」。
さらに、2017年のコード改訂によって、透明性およびエンゲージメントに関する期待が高まり、投資家の集団的エンゲージメントもまた「有益」である旨が追加された。日本の投資家が集団的エンゲージメントに早期に着手した例が、投資家の気候変動対策イニシアティブであるClimate Action 100+(CA100+)だ。同イニシアティブに署名した日本の投資家に、三井住友信託銀行、アセットマネジメントOne、三菱UFJ銀行、損害保険ジャパン日本興亜アセットマネジメント、りそな銀行、富国生命投資顧問、日興アセットマネジメントが名を連ねている。
気候変動に関するアジア投資家グループ(AIGCC)のディレクターを務め、CA100+グローバル運営委員会(global steering committee)メンバーでもあるレベッカ・ミクラ・ライト氏は、海外の投資家と比較して、こうした形態のエンゲージメントはまだ日本で理解されつつある段階にあると述べている。機関投資家協働対話フォーラムも、投資家による集団的スチュワードシップ実施をサポートするために設立された団体である。
「従来の対話はESGの枠組み内で行われており、気候変動が具体的に取り上げられることは皆無だった」とミクラ・ライト氏は語っている。「まさに実践をしながら学ぶプロセスで、集団的エンゲージメントの実践的な応用といえる」。同氏は、日本市場での企業との直接的エンゲージメントが制限されているにもかかわらず、GPIFが2018年10月にCA100+への署名団体に加わったことは市場にとって重要だったと述べている。「これは特に気候変動について、具体的にどう物事を進めていけるかを示すのろしとなった」。

FTSE Russellの岸上氏は、自身がFTSEでの勤務を始めた2007年から、投資家のエンゲージメントには劇的な変化があったと断言する。「その当時、エンゲージメントは非常にアグレッシブなアクティビスト的アプローチとみなされていたため、日本におけるエンゲージメントは皆無に近かった。ところが今や、投資家が企業とのエンゲージメントを声高にアピールするようになっている。これは大きな変化だ」。

政府が後押しするグリーンボンド支援イニシアティブ
2014年、日本政策投資銀行(DBJ)は日本初のグリーンボンドを発行し、同年に国際資本市場協会(ICMA)はグリーンボンド原則を策定した。発行はその後数年間堅調に増加したものの、他国と比較すると伸びは限定的で、環境省の関与を促すこととなった。2017年、環境省はグリーンボンドガイドラインとモデルケースの概要を発表し、発行件数は2016年の4件から11件に増加した。そして2018年、環境省は市場のさらなる鼓舞を目的として プロジェクトを発足 させ、外部レビューおよびグリーンボンド組成に関するコンサルティングに関して1発行体あたり最大5000万円(468,000ドル)の補助金を与えることを決定した。このスキームは成功を収め、2018年には発行件数は33件に増加した。対象は初回発行のみに限られる可能性はあるものの、日本政府は翌年度も同スキームを続ける予定である。

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