「GPIFはESGマテリアリティを公にして市場を後押しすべき」調査研究が指摘

ニッセイアセットマネジメント(NAM)が新たに発表した調査研究報告書によると、運用資産額が1兆2000億ユーロにのぼる世界最大の年金基金である、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESGに関する重要情報を積極的に開示し、アセットマネジャーやESG報告フレームワーク開発者に影響を与えるべきとされている。

この提言は、昨年11月にGPIF がNAMに 委託 したESG情報開示と開示活動に関する詳細研究の一部である。

同調査研究は世界の大手年金基金におけるESG情報の開示状況を分析したもので、特に「ユニバーサル」アセット・オーナー(市場の大半を保有している基金)は、より広範なインベストメント・チェーンへの影響力行使を目的としてESG情報を開示する傾向が強いとしている。

同調査研究は、運用資産額(AUM)上位30以内、または同上位300のうち公的年金基金に区分される世界の年金基金を対象としている。

同プロジェクトの中心として調査研究を行ったメンバーの1人であるニッセイアセットマネジメントの林寿和氏は、次のように述べている:「アセットマネジャーは常にアセットオーナー、特に大手の動向に注目しているため、アセットオーナーによる開示はアセットマネジャーの行動に影響を及ぼすと期待される」。

GPIFは2017年に初めて年次ESGレポートを発表したが、林氏によれば同報告が対象と想定していたのは投資先企業ではなく一般大衆だったという。

林氏によると:「同報告の内容は主に彼らのESG投資活動に関するもので、投資管理において自ら重要とみなしている具体的なESG問題に関する議論は必ずしも含まれていなかった」。GPIF は国内外でESGの積極的な支持者として知られており、数十億ユーロを3つのESG指数で運用している。

2017年、GPIFはスチュワードシップおよびESG関連活動をより重視する形で運用委託機関に関する評価基準の改訂を行い、昨年にはマーサージャパンに運用委託機関の報酬体系のレビューを委託している。

NAMの調査研究には、アセットオーナーは基準の整合性を向上させるため、ESGフレームワーク開発者とのエンゲージメントを検討すべきであるとの提言が記されている。

林氏は次のように述べている:「そもそもフレームワーク開発者および基準設定者の多くは、投資家に向けた企業情報開示の改善を目的としているため、情報開示に関してアセットオーナーの要求を無視できないだろう」。

同調査によると、GPIFが投資管理における重要なESGファクターを積極的に開示することは、どのようなESG情報を開示すべきか頭を悩ませている企業に見識を与えるものになるだろうとしている。

また、GPIFは企業とのエンゲージメントが法的に認められていないため、ESG情報の開示がエンゲージメントの代替的ツールとして活用されるべきであると提言している。

林氏が説明するところでは:「多くの企業は、ESG情報開示に関するフレームワークおよび基準が多数存在することに困惑している。我々は、アセットオーナーからの明確なメッセージは企業だけでなく投資コミュニティ全体に対する重要な指針になると考えている」。

NAMの調査研究に関する最終報告はまだ公表されていない。