RI Careers Interview: 自ら選択をしたというよりも、マーケットのニーズに合わせ柔軟に対応をしていたら、それが自分自身のキャリアとなった

みずほ証券株式会社、サステナブル・ファイナンス室室長 伊井幸恵氏が現在までのESGキャリアパスをResponsible Investorに語りました。

現在のあなたのポジションについて教えてください。

みずほ証券株式会社、コーポレートファイナンス部、サステナブル・ファイナンス室 室長

サステナブル債(グリーンボンド・ソーシャルボンド・サステナビリティ・ボンド等)のストラクチャリング、引受サポート、グループ内におけるナレッジの共有等を行なっています。

 

1週間の大まかな業務スケジュールを教えてください。また、1日の流れについても教えてください。

午前:出社後、社内MTG⇒顧客訪問

午後:社内MTG⇒顧客訪問⇒セミナー参加等・社内MTG ⇒社内事務作業

 

あなたの責任投資・ESG以外の分野でのキャリアパスについて教えてください。

責任投資・ESG分野での活動年数

2017年から約3年

ご自身のバックグラウンド

詳細は、経歴からご確認ください。

責任投資・ESGを専門分野とするに到るまでの経歴

2017年頃から財投機関債を中心に、グリーンボンドやソーシャルボンドの起債が増加。投資家も当初は生保を中心にESG投資を活発化。

その後、日本でもICMAと日本証券業協会(Japan Securities Dealers Association)が東京でカンファレンスを開催するなど、マーケットにおいてグリーンボンドやソーシャルボンドの起債・投資に対する関心が急速に高まり、引受業務と合わせESG・SDGsの流れやグリーンボンドの論点を研究していく必要があった。2019年4月に正式に組織化をし、室長に就任。今に至る。

 お持ちの職能資格

 日本証券アナリスト協会認定アナリスト。

 

責任投資・ESGをキャリアパスとして選んだきっかけ

自ら選択をしたというよりも、マーケットのニーズに合わせ柔軟に対応をしていたら、それが自分自身のキャリアとなった。

 

責任投資・ESGに関してあなたが思う肯定的、また否定的な点

肯定的:サステナブル・ファイナンスの目的は、気候変動や社会課題に対応するために、必要なところに資金を流すことだと考えており、資金を流すことで世の中の経済活動を持続可能な進めるべき方向に持っていくことが重要。

その方向に発行・投資の双方が舵を切る形になったのは非常に良い流れだと感じる。

否定的:“ESG”というだけで、すべて何でも改善し良くなるわけではなく、投資対象となるアセットなどをよく吟味をする必要がある。また現状のマーケットでは、ESG投資をすることで、パフォーマンスを追求できることが実証されていない。パフォーマンスの議論を置いて、ESGだから“全て良い”という発想になってしまうとESG投資が形骸化する可能性がある。ESGの持つ本質的な意義とパフォーマンスを追求できるような商品性や実証研究が今後必要。

 

あなたのキャリア形成において一番影響を受けた人物とその理由

特定の人物というよりは、キャリアの要所要所において、親身かつ暖かいアドバイスを上司や先輩から受けることにより、今のキャリアを築くことができた。

あなたが感じる持続可能な金融・投資と現在のメインストリームの金融業界それぞれの企業文化に相違点を教えてください。

 サステナブル・ファイナンスは前述の通り、気候変動や社会課題に資金を流すことであり、長期的なタイムスパンで投資を行うが、現在のメインストリームの金融は短期的なタイムスパンで資金調達を行う。メインストリームの金融でも、資金使途は社会課題に使用されることはあるが、より実務的な資金使途を設定することが多い。サステナブル・ファイナンスと現在のメインストリームの金融は、時間軸、資金調達の目的、活用が抜本的に異なる。

あなたの考える持続可能な就労環境とはどのようなものですか。

 仕事にやりがいを持つことができ、かつ適切な業務量であること(人により適切な業務量は異なる)。また仕事一辺倒ではなく、プライベートでも欲しいと思う生活を手に入れられるような、時間配分を行うことができることが持続可能な就労環境だと考える。

 

あなたがキャリア初期のご自身にアドバイスをしたいこと、またやっておけばよかったと実感することを教えてください。

ESGの世界は、国内外という壁があまりない世界。情報も英語のものがほとんどのため、徹底的に英語を勉強しておけばよかったと感じる。 

 

これから責任投資・ESGキャリアを築く人たちにどのようなアドバイスを送りますか。

取得するべき職能資格・必要な経験

ベースとしてファイナンスの知識は不可欠。その知識の上に、サステナブル・ファイナンスに関する知識や経験が必要となってくるため、環境知識を詰め込めば良いというわけではない。その点を忘れずにキャリアを積んで頂きたい。

 役に立つソフトスキル

英語を中心とした語学力。ESGの識者の輪に入っていくだけのコミュニケーション能力。時代の流れやESGに対する潮流を見ながら、発行体の保有するアセットの今後に対し仮説を立て、想像する能力。その想像力及びESGの潮流を踏まえ、ファイナンススキームに落とし込める実務スキル。

簡単なこれまでの経歴を教えてください。

  • IRジャパン, コンサルタント, 2003 – 2007 
  • みずほ証券,  投資銀行部門, 2007-2009
  • みずほ証券, ストラクチャードファイナンス部, 2009 – 2015
  • みずほセキュリティーズアジア, IR部, 2015 – 2016
  • みずほ証券, デットキャピタルマーケット第三部, 2016 – 2019 (サステナブル・ファイナンス・デスク 2017-2019)
  • みずほ証券, サステナブル・ファイナンス室, 2019 – 現行

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